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SS:崩れぬ笑顔


10/25は天本さんの誕生日! なので、今年はとぼけた小話でお祝い。
13大好きですが、ポケ4も結構やり込んでたので13と同じ位好きですヨ。


 とあるの日の朝。台風が島に接近しており、少し風が強く雲も厚い一日だった。
 だが、幸いにもまだ空模様は荒れておらず、特に交通や移動に支障は無いようだ。
 島の学生達もいつもと変わらぬように道……というより
自然に切り開かれた野道を歩いて、今日も勉強やスポーツに励むべく学校へと向かっている。


 「ふぁ~あ……眠い」


 ……訂正。一人、勉強に励まずに授業で眠りこけそうな男子学生もいる。
 日の出高校野球部キャプテンのパワポケだ。


 「おはようございます」

 「ふぁ……ああ、おはよう。天本さん」


 自分の彼女である、天本玲泉から朝の挨拶を受けて、笑顔で挨拶を返した。
 そして、何気ない雑談を交わしながら、いつものように学校へと向かっていた。
 だが、彼女の笑顔を見ている時に、パワポケの頭にある疑問が浮かんだ。


 「(天本さんって……表情が崩れたり動揺する事ってあるのかな?)」




崩れぬ笑顔




 その日の昼休み。彼はいつになく難しい表情をして考え込んでいた。
 その様子を見た周囲の人間から、季節外れの大雪が降るんじゃないかとか
エラい言われようだったが、今の彼にとってそんな事はどうでもいいのだ。

 天本の謎を解明するべく、やや足りない頭脳をフル回転させて大いに悩んでいた。
 以前、いつも笑顔でいる理由については本人から聞いたのだが
それでも、彼女だって少し位は喜怒哀楽の『喜』以外を見せる事だってあるはずだ。

 どうやったら普段と違う表情を見れるのかと考え込んでいるうちに、同級生が集まってきた。
やはり、頭をあまり使わない人間が悩んでいるのを見ると心配なようである。

 一人で考えても良い案が浮かばなかった為、パワポケは皆から知恵を拝借する事にした。
 一通り、集まった同級生達に彼の考えを話し終えた後
まず最初に口を開いたのは山田だった。


 「ほどよし新喜劇の新作DVDを見せれば、きっと笑い転げて表情が崩れるでやんす!!」

 「却下」


 3秒で却下された。まあ、お笑いだと笑顔しか見れないので当然と言えば当然である。

 次に提案してきたのは、村田だった。


 「虫を見せれば、気持ち悪がって怖がるんじゃないかな。
  クワガタとかカブトムシなら持ってるし、山に行けばムカデもいるぜ」

 「ああ、確かに……。でも、虫が苦手そうに見えないけどなあ」


 山田より遥かにまともな意見であった。昆虫などの類いは、女性に限らず
苦手な人にとっては、触る事すら嫌がるものだ。
 だが、天本の実家である神社は山奥にある為、虫と無縁の生活を送っていないはずだ。
 その点を考えると、効果は薄いのではと話した後に、いるんだかいないんだか
まるでわからなかった秋穂から提案が出た。


 「……怖い話……身の毛もよだつ……山奥で命捨てた人の話で……
  聞けば震え上がる……僕も……話していて……怖い……」

 「前に、天本さんにそういう話を聞かせた事があってさ。
 ニコニコしながら『まあ、それは怖いですね』って返されちゃってさあ……。
 それに、不吉ババアの方が怪談話より怖いと思う」


 それを聞いた山田と村田は、強く頷きながらこの案を却下した。この島に住む者なら
不吉ババアの不気味さは誰もが知っているからだ。
 秋穂も自ら「ぶきみ君」と名乗っているが、それすら可愛く見えてしまう程に。


 結局、最善の案が浮かばずにその日の授業が終わり、そのまま野球の練習に参加して
一日が終わってしまった。練習中もずっと同じ事を考えていたせいで
どこか集中できずに、何度か島岡に怒鳴られていた。
 でも、それ以上に天本の表情の事が気になって仕方が無かったので
パワポケ自身は怒鳴られた事については、まるで気にしていなかった。



 「ど~やったら、天本さんの表情が崩れるのかなあ……」


 練習後。帰路に就いている時も、まだ同じ事を考えていた。
 悩んでいる姿だけを見たら、大いに悩む青少年に見えるのだが
悩んでいる内容が内容なので、実にくだらない図である。


 「どうしたんですか? そんなに難しい顔をして」

 「ぎゃっ!?」


 偶然とは恐ろしい物であり、噂をすればなんとやらとも言うように
ちょうど悩みを生み出している張本人・天本が目の前に現れた。
 どうやら、街から家に帰る途中で練習後のパワポケと遭遇したようだ。

 朝と同じように何気ない会話をしながら、楽しそうに歩いて帰っていった。
 だが、朝の様子と一つだけ違ったのは、パワポケの表情がとても複雑な表情になっていた事だ。


 「大丈夫ですか? どこか具合でも悪いんじゃ……」


 彼氏の様子が朝と違ったせいか、天本は心配そうにパワポケに問いかけた。
 もちろん身体の具合はどこも悪くないので、パワポケは大丈夫だよと
天本に返したのだが、やっぱり表情は複雑なままだ。

 
 「(もう、いっその事、直接本人に聞こうかな……?)」


 そう思った、その時。


 ブワッ!!


 一筋の風が二人の間を通り抜けて行った。

 
 「きゃっ!?」

 「あ!!?」


 接近していた台風で強くなっていた風の影響が、天本のスカートにも及んだ。
 ひらりとスカートが捲れ上がり、滅多に経験した事の無い恥ずかしさで一杯になり
普段見せないような恥じらいの表情を浮かべた。

 もちろん、パワポケはそれを見逃すはずが無く
しっかりと目に焼き付けて凄く幸せそうな笑みを浮かべた。

 「(そういえば、前にもこんな事があったっけなあ。
  そうか、最初からこれを待ってればよかったんだ)」

 前にも、というのは春にもユイが春風のイタズラのせいで
同じ目に遭った事があり、その時も捲れ上がったスカートの中と
恥ずかしそうな表情を浮かべていたユイの様子、両方を堪能していたのだ。


 しかし、悩みを解消した幸せと男性にとっての幸せを噛みしめたのは
その一瞬だけで、すぐにいつもの表情に戻った天本の顔を見て
我に返ると同時に、今の彼女の様子がただならぬものである事に気付いてしまった。


 「……見ました?」

 一瞬、張り詰めた空気を醸し出しながら、パワポケに問いかけた。

 「……トンデモアリマセン」

 「見ましたよね?」

 「ホントーニ、シリマセン」


 いつもと変わらぬ笑顔と口調なのだが、逆にそれが怖かった。
 普通の女性なら、怒りと共に相手の頬を張る事ぐらいはするはずだ。
だが、淡々と事実を問い詰めているのが、かえってパワポケの恐怖心を煽っている。

 「そうですか。ではいつまでも黙って立っていても
  仕方ありませんし、そろそろ行きましょうか」

 「は、はい」


 そう言って、再びお互いの家に向けて歩きはじめた。

 その後、天本はパワポケから何を問いかけられても
 『そうですね』など、簡単な返事だけを返すだけで、顔を見ようともしなかった。
 いつもと変わらぬ崩れぬ笑顔のままで。


 「(明日、どうやって謝ろう……)」


 悩みを一つ解消したのに、更に深刻な悩みを一つ抱える事になってしまった。
 ああ、何とも悲しき男の性。

 結局、翌日に謝罪の弁を天本に述べたのだが、『何か悪い事でもしましたっけ?』
 と、わざと知らないふりを続けて、余計に彼を困らせていた。

 彼が許してもらえたのは、それから三日後の事だった。


fin
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Author:野球小僧monjya
駆けだし創作師です。あんな事やこんな事がたくさんですw

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