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SS:テレビゲーム狂想曲

※この作品はpixivで2013/5/1~5/31の間に開催されていたパワポケ春の小説祭りに寄稿させていただいた作品となります。
12主と漣メインのほのぼのおとぼけ日常ネタです。
「……ですから、例え彼氏でもあんな事されちゃったら、誰だって嫌がると思うんですよ」

 繁華街の中心にあるコーヒーショップ。若い女性二人がお茶を楽しみながら悩み相談をしていた。会話内容から察するに、どうやら恋愛相談らしい。
 悩み相談を持ちかけている女性は浅井漣。今年の春からITエンジニアとして仕事に励む新社会人だ。
 忙しさと不慣れな社会人生活に苦労もしているが、彼女の夢の一つでもある新型AIの開発に向けて努力しており、本人もやりがいを感じているので充実した生活ではあるようだ。
 この日はネトゲで知り合った……まあ、早い話がネットで知り合った友人と気分転換を楽しんでおり、一通り繁華街を周り終わった所で現在の悩み相談に至っている。


「はあ……。しかし、私そこまで事情詳しくないので、そうですかとしか答えられないです」


 相談を受けている褐色の女性・ミーナが苦笑いを浮かべながら、漣に当たり障りの無い回答を返す。
彼女は世界的に有名なジャーナリストであり、現在は裏社会の実態を世間に公表すべく世界各地を飛び回って体当たりで取材を敢行している。
 その為、危険を伴う取材も行っており裏組織の人間からも狙われる存在となっており、本来であれば呑気に外出する事も容易ではなく、彼女を狙う人間に処分されかねないのだが、そこは本人の策や身のこなしで度々回避している。
 もっとも、漣がネット界隈の事情・情報収集が上手く、彼女から得た情報を直接聞く意味合いも兼ねている為、こうして気分転換をしながら漣に取材をする事も時々あるから、ミーナ自身そこまで外出する事に不安は無いようだ。


「そんな事言わないでくださいよ……ミーナさんだって、最近まで一緒にやってたじゃないですか」

「それとこれでは、また別問題だと私思いますが……」


 漣の熱意にかなり押され気味のようだ。恋愛相談を受けてはいるがミーナ自身、男性との色恋沙汰にはほとんど無縁でありどう答えていいのかわからないのだ。
 なので、当たり障りのない回答でやり過ごすしか手段が無い。
だが、無縁と言っても本人にその気が無い訳ではなく、最低限の男女の交際や恋愛事情位は彼女も知っている。
前述の通り、危険な取材を繰り返してる故に裏社会の組織の刺客に狙われており、身の安全を確保する事が最優先であり本人に恋を楽しむ余裕が無いのが大きい。


「もー! どうしてそんな曖昧な答えばっかり返すんですか! 私、真剣なんですよ!?」


 具体的な回答が得られない事に不満と不安が溜まったのか、次第に漣の表情がむくれていった。
普通の男性に、この表情を見せれば一瞬で魅了される程の可愛さと破壊力を持っていたが、むくれた表情を見せる相手が女性であるミーナでは何の意味もなさない。
 次第にミーナも困り果てて、自分の知りうる知識や意見で何とか漣をなだめようと必死に説得を試みたが、どうしても納得が行かない様子だった。


「はあ……ですから、私『ハッピースタジアム』はプレイした事ありましたがそれ以外のゲーム詳しくないから答えるの難しいですよ?」

「う~……だって、だって……一緒にゲームをしてたらミスばっかりするし、終いには怒るんですもん!」


 彼女は間違いなく、ミーナに恋愛相談をしていた。
 ……そう、彼氏とテレビゲームをしていた時に始まった喧嘩について真剣に悩んだ事について。

 しかし、漣は何故これほどまでに自分の彼氏であるパワポケに珍しく不満を抱いて喧嘩に発展してしまったのか。
漣の彼氏・パワポケは地元にある母校の野球部でコーチを努めているが、昔気質な根性主義で口より先に手が出るような指導者ではなく、きちんと相手に指導内容や練習・行動の意図を丁寧に教える人物であり部員だけでなく知人や友人相手にも喧嘩や暴力沙汰は起こさない好青年だ。
 もちろん、最愛の彼女である漣に辛辣な態度で接する事もまずありえない。


 さらに、このカップルを知る人物に聞けば、まず喧嘩なんかしないだろうと言うのが大方の意見である。
 むしろあまりの仲の良さに嫉妬して「リア充爆発しろ!(笑)」など茶茶を言われるのがいつものお約束である。
 では、一体テレビゲームを楽しんでいる際に、何が起こったのか? 実際に喧嘩が起きた前日まで時間を遡ってみる事にする。




~テレビゲーム狂想曲~




 某県某所にあるアパート。漣が大学を卒業した直後から、パワポケと漣の二人はこのアパートで同棲している。
 お互いの勤務地からやや離れた場所にあるが、家賃がそれなりに安い為、まだ金銭面で余裕があまり無い二人が一緒に生活できる為の環境としては非常にありがたい物件だった。
 また、近所には玩具店やゲームショップ、果てはマニアショップも多く点在していたのでゲームが好きな二人にはその点も好印象だったようだ。

 実際、お互いの休日には二人揃ってそれらの店に出向いて一緒に遊ぶゲームを購入する事が多い。
 お互いの都合が合わない時は、どちらか一方が店に出向いて気に入ったゲームを購入をしており、その後、家で二人でゲームをプレイする事でコミュニケーションに繋がっている。
 ゲームの勝敗で、家事の分担や食事の献立の優先決定権を決めたりもしているので恋人としての関係は非常に良好であった。 ……この日までは。

 事の発端は、漣が自宅の私物整理をしていた事から始まった。
 パワポケが野球部でのコーチを終えて、自宅に帰宅するなり漣が嬉しそうに彼を出迎えた。ここまではいつもの光景だ。


「ねえ、パワポケさん。さっき、押入を整理していたらこんな物を見つけたんですよ」


 そう言って、漣が取り出したのはファミコンやスーパーファミコン……家庭用ゲーム機が世間に普及し始めた時に発売されていたゲーム機だった。
 以前、漣が中古ゲーム販売店で購入した後、そのまま押入に保管していて忘れていたらしい。
 現在ではプレイステーション3や3DSなどが世間では流行っているが、かつてはこの古いゲーム機が数々のヒット作品を生み出し、爆発的人気を誇っていた。
 とあるゲームの発売日の早朝から店頭に並ぶ人が続出したという社会現象まであった程だ。
 だが、パワポケ自身がゲーム好きになったのはここ最近の事であり、古い世代のゲーム機には詳しくなかった。それ故に漣が差し出してきたファミコンを物珍しげに眺め、非常に興味を示していた。


「へえ……昔のゲーム機ってこんなのだったんだ。ちょっと面白そうだな。漣、俺このゲームちょっとやってみたいんだけど」

「いいですね! たまには昔のゲームもいいものですよ」

「うん。漣がそう言うなら信用できるよ」

「も~、パワポケさんったら?」

 ……時々、こうやって甘い言葉や雰囲気をいとも簡単に醸し出すから、彼らの知人に茶茶を入れられるのである。

 話をファミコンに戻す。二人はファミコンをプレイするべくテレビにケーブルを繋ぎ、準備を整えた。
 しかし、ここで最初の問題が発生した。自宅に保管されていたゲームは一人用の物が多く二人同時に遊べるゲームが限られていたのだ。
 休日はゲームを一緒に楽しむ事が多い二人なのだが、ゲームをする時は基本的に二人同時に遊ぶのが恒例となっていたのだ。


「どうしましょう……一人用のゲームが多いですね」

「う~ん……とりあえず、これをやってみる?」


 パワポケが選んだのはベルトスクロールタイプの協力型アクションゲームだった。パンチやキック・武器攻撃を駆使して敵を倒しながら進んでいく……そんな感じのゲームだ。
 漣も過去に何度かこのゲームのプレイ経験もあるので問題ないと快く承諾し早速プレイする事にした。


「あ、そっちに敵が向かってますよ!」

「漣、後ろ危ない!」

「カバーカバー!」

「「あははははは……」」

 開始直後は和やかで笑い声も響く明るいムードで、いつものようにゲームを楽しんでいた。
 それに加えて普段とは違うゲームを楽しんでいる新鮮さもあってか、いつも以上にお互い惚気っぷりを発揮して甘い言葉を吐きまくっている。
 もう、本当に末永く幸せに爆発してしまえと言われても今の彼らなら軽々吹き飛ばしてしまうだろう。

 しかし、一つの出来事がきっかけで仲良しムードに亀裂が入ってしまう事になるのは、誰にも予想が出来なかった。
 不慣れなゲームだった為か、ここでパワポケに操作ミスが発生した。彼が投じた武器が漣の操作するキャラに当たってしまったのだ。不運にも、それがきっかけでゲームオーバーになり最初からやり直しとなってしまった。


「もー、しっかりしてくださいよー……。今度は間違えないでくださいね?」


 彼氏のミスに対して苦笑いを浮かべながら注意を促した。パワポケも『ゴメン』と一言謝って、再度最初からゲームを始める事になった。
 だが、ハプニングというものは案外連鎖して発生してしまう物である。またしても、パワポケが敵に向けて投じた武器が流れ弾となって漣の操作キャラに当たってしまった。
 漣の注意直後に起きた出来事であった為、今度は真面目な表情で注意を促した。いつもゲームを和やかな雰囲気で楽しんでいた事で安らぎを得ていたパワポケからしてみると、若干ムキになりすぎている漣の様子にほんの少しずつだが不満を感じ始めていた。


 相手に対して不満を抱いていると、普段は気にならない些細な事でも神経を刺激してしまい八つ当たりや不満を口にして嫌みをぶつけてしまうのが人間である。
 そのせいか、今度はパワポケが漣に対して注意を促した……というより、敵キャラクターの落としたアイテムを漣が拾った事に対して不満をぶつけたのだ。
 いつもならば、協力プレイ形式のゲームでは、お互いに報酬を折半しようと約束事を決めて楽しんでいるからだ。約束を破られたとあれば、やはり誰しも納得がいかない事だろう。


「さっき、漣がアイテム取ったのに連続して取るのはズルくないか? いつも約束してるじゃないか」

「しょうがないじゃないですか! 私だってパワポケさんに取らせてあげたいけど、無理したらまたゲームオーバーになっちゃいますし」

「あのなあ、ちょっとムキになりすぎてないか? ゲームなんだから、もう少し肩の力を抜いて気楽に……」

「ちゃんと指示通り動いてくれていれば、こうはならなかったはずですよ」

「なにおう!?」

「むー!!」

 こうなってくると、歯止めは利かなくなる。恋人に限らず、人間関係で一度亀裂が入ってしまうと修復は容易ではない。
 その後、ゲームをプレイし続ける事でパワポケも操作の要領を覚えてはいったのだが、偶然を装ってわざと漣の足を引っ張るような行動をとってイタズラを仕掛けた。
 もちろん漣もキャラの動きだけではなく、パワポケの雰囲気から故意に自分を妨害しようとしているのは気づいていたので同じ事を彼にやりかえしていた。
 そして、またパワポケもそれに気づいてやり返して、漣にやり返されて……数時間、延々とこの光景が続いていった。


「いたっ!! 漣、またわざとやったな!? パンチは敵に当てろよ!」

「そっちこそ、むやみに武器振り回して私に当てないでくださいよ!!」


 それでも、クリア寸前までこの調子で進めたもんだから大したものである。しかし、最後の悲劇がここで発生した。



ガツン!!!!



「「あーーーー!!?」」



ガー……ピピ……ガガガ……



 ファミコンに限らず、精密機械は強い衝撃に弱い。二人で身振り手振りしながら喧嘩をしていた煽りで本体とソフトに衝撃を与えてしまいゲームがフリーズしてしまった。旧世代の機器故のデメリットである。
 二人の間にしばし沈黙が走る。今、部屋に流れている音はフリーズしたファミコンから発するノイズ音だけだ。
 そして、数分後。何が起こったのか、改めて状況を理解した所で……。


「何やってんだよー!! 壊れちゃったじゃないかー!!」

「私じゃないですってば~! パワポケさんが無理矢理引っ張るからですってば!!」


 ……こうなった。子供同士でなら、こういった喧嘩はよく見られる。熱中しすぎるが故に、不意の事故でゲームが止まった事に対して誰の責任であるかという事に対して。
 しかし、彼らは紛れもなく立派な成人であり大人だ。にも関わらず、こうなった。
 この後、気を取り直して別の協力ゲームをいくつかプレイしたのだが、結局同じ事の繰り返しとなり、最終的に口もきかなくなってしまった。



……そして、現在の漣とミーナの相談に至るというわけだ。


「漣……パワポケも、わざとやったわけじゃないでしょう?」

「はい……」

 しばらく時間が経過した事とミーナになだめられたのもあってか、改めて冷静になって前日の喧嘩の経緯を思い返していた。
最愛の人物であるパワポケに辛く当たってしまった事。彼が普段プレイし慣れていないゲームでのミスであった事。
それらを思い返して罪悪感を感じているようだ。


「一つの事に熱中して真剣に取り組む点、漣の良い面だと私思ってます。でも、時々熱中しすぎて空回りしたり、力の入れすぎで失敗する事も多いかなとも思います。彼の事を強く想ったり大切にしようと張り切るのもいいですが、もう少し力抜いてもいいんじゃないですか?」


 ミーナは冷静な分析をしつつも、暖かみのある口調で漣にこうアドバイスをした。
 話を聞いている間は今にも泣き出しそうな表情であったが、少し時間をおいて気分を落ち着かせた後、こう切り出した。


「……ごめんなさい、今日はそろそろ家に帰りますね。早く帰らないと、先にあの人が家に着いちゃって、謝るタイミングを逃しそうですから。あ、お金ここに置いておきますね」


 そう言って、席を立とうとする漣をミーナは遮った。


「その心配、いらないですよ」


 穏やかな笑みを浮かべて答えた後、漣に後ろを向くよう指で合図をした。
 そこには、ちょっとばつの悪そうな表情を浮かべたパワポケの姿があった。わざわざ漣を探して謝りに来たのだろう。


「あ……あ、あの、練習、じゃなかったんですか?」


 同じようにばつの悪そうな表情で、何故ここにいるのかパワポケに問いかけた。彼女は前日から口もきいてなかったので今日の外出先どころか外出する事さえ伝えていなかったのだ。


「いや……なんか先に俺から謝らないと、どうしても気が済まないなって思ってさ。だから部員には悪いけど、今日は先にあがらせてもらったんだ。先に帰ったら家にいなかったし、もしかしたらここかなって思って」

「……」

「だって、二人で暮らす前から一緒によく来てたし……読みが当たってホッとした。もし、いなかったら本当に心配だったよ」

「あ……」


 大切な人の事をきちんと把握できているからこそ読みだった。ケンカした事で気まずい雰囲気が続くんじゃないかと心配をしていたが、何があろうとも自分の事を大事に想ってくれていた事を改めて再認識できた事で、溜まっていた感情が静かにはじけた。
 席を立って、うっすらと涙を浮かべながらパワポケを抱きしめた。


「……ごめんなさい」

「……ごめんな」


 昨日、激しい口論をしたとは思えない程、落ち着いた表情でお互いに謝罪の言葉を述べた。
 幸い、店内に客は彼ら3人しかいなかったので邪魔する者は誰もいない。静かに抱き合ったまま、大切な人と一緒にいれる安心感を噛みしめていた。


「さて……私、お暇しますです。どぞ、ごゆっくり」


 二人の様子を見て安心したのか、そっとミーナは喫茶店を後にした。
彼らの仲の良さを羨み、いつかジャーナリストとしての活動が落ち着いたら、自分も誰かと恋に落ちるのかなと思いつつ帰路に就いた。



 雨降って地固まる。
 しばらく経ってから、パワポケと漣達も仲良く帰路に就いていた。
今度はどのゲームソフトをプレイするのか、今度はケンカしないで仲良く遊ぼうなどといった、たわいもない会話をしながら幸せそうな笑みを浮かべていた。




 ……が、これで一見落着と思ったら大間違いだった。



「ですから、自分の彼女とはいえあんな事をされたら普通は嫌がると思うんですよ。そう思いません? ミーナさん」

「……本当に仲のいい二人ですねえ」

「はぐらかさないでください! 俺、真剣なんですよ」


 仲直りから3日後、今度はパワポケからミーナに同じ内容の相談をもちかけていた。
 ゲームはコミュニケーションツールの一つとしても有効だが熱くなりすぎると友情や愛情をも破壊しかねないのだと、ミーナは呆れながら認識する事となった。


 物事に熱中するのも程々に……。



~テレビゲーム狂想曲 完 ~
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