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パワポケ親子日記ネタ


このSSは「マイドはや」様で行われている企画・パワポケ親子日記向けのネタとなります。


「がんばれ!!ハンターズ」

(遠前町 公営グラウンド)

「かっとばせー! ホームラン、ホームラン!」

 遠前町の商店街から数km離れた所にある野球場。大人の草野球から少年野球まで、幅広く使われている
地元の野球好きな人間達に重宝されているグラウンドだ。
 今日も元気な子供達が野球を楽しんでおり、今は練習試合の真っ最中で
両チームの子供達が大きな声を張り上げている。保護者も、その光景を微笑ましく思い
暖かい目線を送りながら我が子の活躍を祈り、のんびりと観戦をしている。
 ……約2名を除いて。

「……心配だ。非常に心配だ」

 そうつぶやいたのは、現ヤクルトの監督・中村平次だ。この日はオフの為、妻の梨子に(無理矢理)駆り出され
公営グラウンドのスタンドで少年野球観戦に来ていた。
 だが、別に彼の子供が試合に出場しているわけでもないし、自分が指導した球児達が今日の試合に出場しているわけでもない。
それなのに、普段の公式戦では見られない程の動揺っぷりを見せている。

「名将でも不安になる事ってあるんスね」

 隣に座っていた男が平次に冗談を飛ばした。しかし、冗談を飛ばした男も心中穏やかでは無い様子で
別の意味で不安な様子を隠せない様子だった。彼は杉下将司。現役のプロ野球選手であり既に既婚者だ。
今日の試合に息子が出場する為、はるばる妻と二人で観戦に来ており
我が子の活躍を見守っている……のだが、彼も息子のプレー以外の要素に不安を抱えている様子。

「当たり前だ! 娘が監督をしているんだぞ!」

 そう。彼が一番不安に思っていたのは娘の梨奈が少年野球チームの監督を指揮を執っていた事だったのだ。
一塁側ベンチに堂々と座って自分のチームの小学生達に檄を飛ばしており、風格だけなら一流監督も顔負けである。

「もう、よその子に迷惑をかけないかだけが心配で……」

(カコン!!)

 言い終わる前に、平次の後頭部に缶が直撃した。歳を取っても、相変わらず梨子はイタズラと称して
夫に空き缶を投げつけるのが癖なのだ。投げられる側はたまったもんじゃない。

「もー、ウジウジしないの。試合の音が聞こえないじゃない。
 梨奈ー! ここでアピールしてプロ球界に殴り込みだよ!」

「かずくーん! 明るさを絶やしちゃダメですよ!」

 心配そうな夫達と違って、妻二人は動揺するどころか我が子のプレーや采配を楽しんでおり
挙句の果てには、梨子が『パパよりも、刺激的で楽しい采配』だと言い出す始末だ。

「いや、なんかすいません……こっちが平次さんに相談したばっかりに、迷惑をかけてしまって。」

 申し訳なさそうな顔をして、平次に謝る将司。妻と娘は誰にも止められないんだし、お前が気にする事じゃないと
言ってはいるものの、心底疲れ切った感じで平次は返した。
 そもそも、どうしてこういう事態になったのか。あれは1か月前の事だった。



 1か月前、息子・一仁が5個目のチームから退団を申し出ていた。練習中に些細な事がきっかけで喧嘩となり
相手を殴って泣かす事はこれまでも度々あり、この時も同じ理由であった。
彼は、チームに入る度に、こういったケンカ騒動を起こし、チームメイトと仲が悪くなり辞める……これの繰り返しであった。
 その度に、両親揃ってチームの監督やケガを負わせた子の保護者に謝る事が恒例となっていたのだが
同時に両親まで監督や保護者とケンカを始める事も恒例行事となっていたので
各チームから次第に『問題児一家』と目をつけられてもいたのだ。

 もっとも、全て杉下一家に非があるわけでもなく、むしろ陰湿なイジメを助けた結果
いじめっこ側の集団に妬まれて、彼まで標的にされた結果の喧嘩も多いので
一仁も、どこに行っても変わらない人間関係に嫌気がさしていた程である。もちろん暴力は良くないが。

 このままでは、野球が嫌いになってグレてしまうのではと心配した杉下夫婦は
公私共に世話になっている、中村一家を訪ねて息子の教育について相談をした時に一仁の人生に転機は訪れた。

「やっぱり、あたしの教育がダメなんでしょうか。かず君、どこに行ってもケンカしちゃうし……」

「でもさー、相手の子がイジメてたの助けてるんでしょ? 一仁は悪い事してないんだから
もっと堂々と『よくやった!』ぐらい言ってあげてもいいんじゃない。
 それにさ、仲の良い子もたくさんいるんでしょ? だったら不良なんかにはならないよ、きっと」

「相変わらず、奥さんの度胸の良さに脱帽っスよ……」

「その結果、娘が自由奔放を通り越してリコ以上にワガママな時があってな……」

「暴れて、ちゃぶ台ひっくり返そうか?」

「「すいません」」

 そんな事を話している大人をよそに、一仁は梨奈の部屋で二人っきりになっていた。
彼は彼で、梨奈にケンカばかりしている日常生活の事を話していたのだ。
 その様子は非常に寂しげで落ち込んでおり、いつもの明るい表情が真っ暗だった。

「俺、野球やめたくない。でも、行く先々で嫌な奴が弱い者いじめばっかりしてて
許せないから、すぐにケンカしちゃうし……。ねえ、梨奈ねーちゃん。何かいい方法ないかな」

 しばし考え込む様子を見せた後、梨奈は一仁にこう切り出した。

「じゃあ、だったらさ。自分で仲の良い奴を集めてチーム作っちゃいなよ。
弱い者いじめじゃなくて、強い者いじめをするようなチームをね」

 その瞬間、一仁の頭から寂しさや迷いが一瞬で吹っ飛んで行った。
メンバーは、幸いにも仲の良い友人は九人以上いるので大丈夫と元気よく梨奈に返事をして
後は親の承諾を得るべく、もの凄い勢いで四人のいる部屋に駆け込み梨奈との会話を説明し始めた。
 あまりにも唐突過ぎる事、そして多くの課題が山積みである為、夫二人は難色を示し
何とか新しいチームを探そうと説得を試みていたが、どうしても聞かない様子だったので
監督がいなければチームはできないんだぞと強引な理由で一度はあきらめさせた。
 ……が、こんなに面白そうな事を目の前にぶら下げられて、女性陣三人が黙っているわけがなく
大はしゃぎで夫達を説得し始めつつ、監督人事を考えていた。

「監督ぐらい、あたしがやるよ。大人がやればいいんでしょ?」

「あー! ママ、ずるい! 一仁に提案したのは、あたしなのに!」

「かず君の面倒はナオっちが見ますから、あたしが監督ですってば!」

「「あの、まだ作るって決まったわけじゃ……」」

「「「子供の将来がかかってるんだから、黙ってなさい」」」

「「ゴメンナサイ」」

 こうなると、もう手の付けようがない。最終的にじゃんけんで監督人事を決める流れとなり
梨奈が勝って、晴れて女子高生監督と一つの少年野球チームが誕生した。



「ツーアウトだぞー! 3つ目のアウトは自分で取るぐらいの気持ちで守れよー!!」

「おーーっ!!」

 ショートの守備位置から一仁の元気のいい声が響き渡る。今では、立派なチームの司令塔として
元気にチームを引っ張っている。ケンカは相変わらず絶えないが、以前いたチームと違って
気心の知れた友人同士なので、ちゃんとお互いに非を認めあってすぐに許している。

 自分の子供達が、堂々と元気よく野球に打ち込んでいる様子を見て
両親達も試合が進むにつれて、次第に安心して観れるようになっていた。

「やらせてみてよかったな、ナオ」

「そうですね。今のかず君、すっごく活き活きしながら野球してますよ」

「だから言ったでしょ。やらせてみたらって」

「試合終了まで、監督が不祥事を起こさないか心配だ」

 平次の心配をよそに、試合は特に問題も無く進み、最終的に引き分けで終わった。
初陣にしては健闘を見せていたのだが、勝てなかった事で監督も含めチームのメンバーは
ちょっぴり不満げな表情をしていた。ただ、一仁一人だけは笑顔だった。彼は、確信を得ていたからだ。

『このチームなら、絶対に楽しくやりながら強くなれる』と……。

「野球、楽しいか? 今度は続けられそうか?」

 充実感たっぷりの顔を見て、将司は一仁にこう問いかけた。

「もちろん! こいつらと一緒に全国大会に行く!」

 その言葉が本当に実現するのは、後1年経った後のお話。

Fin
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