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パワポケ親子日記ネタ


このSSは「マイドはや」様で行われている企画・パワポケ親子日記向けのネタとなります。


「親バカ」

 都会から少し離れた、閑静な住宅街。町の中心部から電車で1時間程かかる場所だが
近くにショッピングモールや、大きな公園があり
一般人だけではなく、有名人も好んで住居を構える人気の土地である。
 休日には親子連れもよく見られ、住民達は都会の喧噪から離れて
ゆったりとした一時を過ごしているのだ。

 プロ野球選手であるパワポケも、もちろんその一人だ。
 今はシーズンオフの為、自主トレを欠かさぬと同時に
妻の奈桜と息子の3人で幸せな日々を送っている。

「は~い、かずひとく~ん。1+1は~?」

「うー……さん!」

「おお~、よくできました~! ぱちぱちぱち~!」

 一見、母と子が算数の勉強をしている至って普通の光景なのだが
明らかに計算結果を間違えているにも関わらず
母親は息子の計算結果に対して喜んでいた。
 その光景を見ていた父親が、呆れた様子で妻である奈桜に嘆いた。

「あのなあ、奈桜。子供に嘘教えちゃダメだろ。
 いくらなんでも、小学生の算数ができない母親じゃ
 どうしようもないと思うぞ」

 普通の母親ならば、冗談の一言で済ませて
その場は丸く収まるはずなのだが、この母親は普通ではない。
 冗談で終わらせるどころか、奈桜は真顔でこう返した。

「パパ、いいですか?
 これは、一仁の発想の柔軟性を鍛えているんです。
 1+1だって、必ず2になるとは限らないんですよ?
 1本ずつある棒の片方が折れて2つになったら
 見事3に増えるんですよ!
 一仁はそれをわかっていて、あたしに3って答えたんですよ」

「おおおおお! なるほど!!
 凄いな、そういう考え方もあるのか!
 奈桜、俺が間違っていた。お前……頭良いな」

 いったい、どうやったらこんな屁理屈で納得してしまうのか。甚だ疑問である。
 このやりとりを見てわかるように、残念ながらこの夫婦の学力は下から数える方が早い程に残念な物である。
特に父親のパワポケは、卒業前のテストで5教科合計で90点という
とんでもない失態をやらかして、卒業の危機に陥り
危うく高校中退という不名誉な経歴でプロ入りする事になりかけた程だ。

「1+1、しゃん! しゃん!」

 母親に誉められたのが、よほど嬉しかったのか
ずっと同じ事を繰り返し答えている。加えて、身体を目一杯動かして喜びを表現しており
元気な様子を両親にアピールしているのも伺える。

 その様子に夫婦は癒され、しばし息子を見つめていた。

「無邪気だねえ、一仁は」

 シーズン中は、常に鬼気迫る勢いで相手を圧倒し
数多くのピンチを切り抜けてきた若きエースも、息子の可愛さには適わないようだ。


「そりゃあ、あたしの可愛い息子ですからね。
 あたしによく似て、元気いっぱい動いて愛嬌を振りまく
 とってもよい子ですよ」

「いや、【俺に】よく似た子だろ?」

「違いますって。あたし似ですよ」

 こうなってくると、どちらも引かず徹底的に口論して
相手を説き伏せようとするものでいつしかどっちが息子似かという事を忘れて
高校時代のテストの点数で張り合ったり
化学の実験で使う薬品を理解せず、適当に混ぜ合わせて
騒動を巻き起こしたのはそっちが悪いからだと
とんでもな方向にまで喧嘩に発展してしまうのだった。

 そして、幼い子供というものは感受性が豊かであり
喜びだけでなく、恐怖心もしっかりと受け止めてしまうのである。
両親の様子を見て、とうとう泣き出してしまった。
 あわてて、パワポケと奈桜が息子の異変に気づいて
喧嘩もそこそこに切り上げ、息子をあやし始めた。

「えーと、えーと、こういう時は……ほら、パパ!
 変顔で一仁を笑わせるんですよ!」

「素直に【いないいないばあ】でいいだろそこは!」

「うああああああああん!!!!」

 結局、5分ほど経った後、ようやく泣きやんで再び一仁に笑顔が戻った。
それまでの様子はどうだったかというと、奈桜は見当違いな行動をパワポケに要求するわ
パワポケも妻へのツッコミと無茶ぶりに応えるのに突拍子もない行動に出たりと散々な物であった。


 一騒動と勉強(と言えるのか、非常に疑問ではあるが)を終えて
今度は、家族揃って近所の公園に出向き野球を楽しむ事にしたようだ。
 パワポケの投げるボールを一仁が打ち返す……
要はトスバッティングに近い形で息子にバッティングを教えながら、野球を楽しませている。

 もちろん、パワポケも緩いボールしか投げていないが
それでも子供にしては、十分すぎる程のバットコントロールを
両親や同じ公園に来ている人達に見せつけ、本人も満足そうな笑みを浮かべてバッティングを楽しんでる。

「パパ、もっかい! もっかい!
 もっかい、ぱこーん! ってうつ! 
 それでね、パパといっしょにやきゅうをしてる人みたいに
 ホームランをいっぱいうつの!」

父親がリーグを代表する投手の一人である事は
まだ幼い彼にはわかっていないようだが、それでもプロ野球選手への凄さは
現地観戦やテレビを通じて肌で感じ取り、憧れているようだ。

「おいおい、そろそろ勘弁してくれよ~。
 パパはピッチャーなんだから、こんなに打たれちゃうと
 自信無くしちゃうよ」

 さすがに加減してるとはいえ、投手としては相手に打たれてばかりいるのは嫌なのか
苦笑いを浮かべてパワポケは、そろそろ切り上げるよう説得を試みた。
 が、一仁は全然打ち足りないのか、頑なに打つのをやめようとせず
父親にボールを投げるよう要求し続け、さすがに困り果てたパワポケもお手上げの状態だ。

 奈桜は、息子の頼みなんだから聞いてあげましょうよと夫に言うものの
既に100球以上投げ込んでいるだけでなく、息子が遠くへ打ち返したボールを
自ら捕りに行く事に疲れたので、こちらもまた引こうとしない。
 そんな中、奈桜は意地悪そうな笑みを浮かべて、こんな一言を一仁に投げかけた。

「パパ、疲れちゃったんだって。続きは、かず君がプロ野球に行ってからやろうって言ってますよ。
 多分、その頃のパパは昌おじさんと同じぐらいの歳になっているでしょうけど
あの人と違って、すっごいヨボヨボになってるだろうから打ちやすいと思いますよ」

昌おじさんとは、彼が所属しているドラゴンズの大ベテラン投手・山本昌だ。
プロ入り後、何かと目にかけられ面倒を見て貰っており一家揃って尊敬している選手の一人だ。

しかし、【そんな事より息子に負けてられるか!】と、訳の分からない対抗心を燃やし
あっさりと挑発に乗って、まんまともう100球投げる事となってしまった。
 しかも、投げる球が次第に力強くなり最後の数球は全力投球で投げてしまっていた。
 プロが投げる150km近くのストレートなんて、子供が怖がらない訳が無く、また一仁が泣き出してしまった。
慌てて自分のやってしまった事に気づいて、両親揃って再び息子をあやし始める。

「バットは振り回しちゃダメですよー!」

「こらやめろ! 誰かに当たったら……」

(メキッ)

 父親の心配は見事に的中した。息子が振り回していたバットが、自分の大事なタマ……
まあ、早い話が男性の急所にクリーンヒットしてしまったのだ。
 悶絶して苦しそうな表情がよっぽど変顔だったのか、それを見た一仁は一瞬で泣き顔から笑顔に戻り
また嬉しそうに母親にその様子を伝えている。
 奈桜もこのスイングはパパにも匹敵しているから、絶対に将来はプロ野球選手になれますよだとか
アメリカに行っても大丈夫ですね、とか親バカっぷりを存分に発揮している。
……父親の身体の心配をよそに。


 日も暮れて、球も見えなくなったので家に帰る事にした3人。
仲良く手を繋いで……帰るはずだったのだが、ここでまた一悶着を起こしていた。

「ぼくが、ママとてをつなぐ!!」

「俺だって奈桜と繋ぎたいんだよ!!」

 子供と本気で喧嘩している。まあ、なんと大人げないプロ野球選手だろうか。
 が、ここで奈桜がパワポケの両手を握り始めた。その様子を見て、ドヤ顔で一仁の方を向き
自慢していたのだが、すぐさま母親が声をかけた。

「かず君、ここに座るといいですよ。
 パパとママ両方を一気に独り占め出来る特等席です。
 おうちまで、二人で運んであげますよ」

 そう言うと、すぐにバツの悪そうな苦笑いを浮かべたパワポケと奈桜の二人はしゃがんで
腕で作ったイスを差しだし一仁をそこに乗せた。そして、そのまま家へと歩き始めた。

「どうですか? これなら二人ともナオっちを独り占めできますよ。
 あたしも、パパとかず君両方を独り占め出来るから最高に幸せ者です」

 普通なら、こんな事を言う時は照れながら言う人間が多いのだが
彼女はまるで照れる事も無く、満面の笑みを浮かべて二人にそう伝えた。
 反対に、パワポケは顔を真っ赤にして自分の取った行動を反省していた。

「やれやれ、なんか子供と本気で奈桜を取り合ってたのが恥ずかしいよ。
 これじゃ俺まで子供みたいだな」

「実際、子供っぽいですよね?」

「ほっとけ!」

「うー、すすめすすめー!」

「ねえ、パパ」

「何?」

「すっごい、幸せ!」

夕日が沈みかけている道を歩く3人は、とても幸せそうな顔で、まっすぐに、自分達の進むべき道を
楽しそうに進んでいた。

Fin
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